佐賀百家図鑑 SAGA VISUAL DICTIONARY

PROFESSIONAL佐賀の農業者

廃園ではじめた農業。切り拓いたのは、輝かしい未来だった。

安東浩太郎 / Koutaro Ando 39歳

福岡県北九州市生まれ。前職は大阪の不動産関連会社で、営業事務職に就いていた。奥さま・美由紀さんの実家がある太良町を訪れた際に、自然・人・食に惚れ込み、移住を決意。30歳の時に脱サラし、たどり着いた農業の道。その後、中山間地域のみかん廃園を切り拓き、アスパラガスの栽培・販売をスタート。夫婦二人三脚の経営や、農業を中心に積極的に取り組む様々な地域活動が徐々に根付き、安東さんがつくる「森のアスパラ」のファンは、全国に約4000軒に。2017年には「佐賀農業賞最優秀賞」を受賞。家族は、奥さまと2人の子どもと1頭のヤギ。

30歳で脱サラ。 惚れ込んだ太良で、生きて行こうと決めた。

前職は、大阪でサラリーマン。そこで奥様と出会い縁あって奥様の実家がある太良町を訪れることに。おいしい食べ物、美しい景色、温かい人々と出会い、太良が大好きになったと言います。移住を考えた時に、一次産業が盛んな土地で、真っ先に浮かんだのが農業でした。「最初はできるか不安だったけど、チャレンジしてみるか」この時、30歳。こうして安東さんは農業の道へと進んで行くのでした。

ゼロからの就農。 先入観がないから、見えるものがある。

佐賀県のアスパラガス栽培は、主にビニールハウスで行われます。そのため、2月~10月までの長い期間の出荷が可能で、収入も安定しています。さらに、他の作物と比較すると、大きな初期投資が不要で、安東さんは簡単なハウスにハサミと台車だけでスタートすることができました。また、青年就農給付金(現:農業次世代人材投資事業)が5年間支払われたことも、安東さんのチャレンジを支える大きな要素だったそうです。

アスパラガスが結ぶ縁。 全国4000人のお客さんが待っている。

安東さん夫婦がつくる「森のアスパラ」のファンは、北海道から沖縄まで全国に。ネット販売やふるさと納税の返礼品として、毎日のように太良町から各地へ届けられています。また、通常であれば捨てられてしまう規格外品のアスパラガスから、お菓子などの加工品開発取り組んでいる安東さん。アスパラガスを通して知り合った人々と協力して、挑戦を続ける姿がありました。

家族と移住。 農家になったからこそできる暮らし。

サラリーマンから農家になって6年目。以前と比べ農繁期には慌ただしい毎日を送る中にも、自分たちで時間を管理し家族との時間はしっかり確保できていると言います。自然の中でのびのびと過ごす子どもたちの笑顔は、移住、就農の決断をして良かったと思える瞬間です。「今、父親のチャレンジする姿をしっかりと子どもたちには見ていて欲しい」と、二人三脚で支える奥様も語ってくださいました。

安東さんは今の自分に対して高い評価を点けてくださいました。それは、農業が軸となった仕事や家族の営み、人間関係など、取り巻く全ての環境に対する満足の証です。「サラリーマンでは実現できなかった生活」と語っているように、自然と向き合う仕事だからこそ実現できた本物の「豊かさ」を強く感じます。

繁忙期と閑散期がはっきりと別れたアスパラガス栽培は、年間の労働時間の推移に大きなムラをつくります。安東さんはこのムラを上手く活用し、繁忙期の利益を最大化する為の営業活動や商品開発はもちろん、家族の時間や、地域との繋がりを強める時間を確保しています。ムラを上手く活用したこの時間の使い方が、年間の収益的なムラをも解消できると、安東さんは語っています。

AGRICULTURAL PRODUCTS佐賀の農産物

No.02
  • 【 学名: アスパラガス・オッフィキナリス Asparagus officinalis 】
  • 目:キジカクシ目 Asparagales
  • 科:キジカクシ科 Asparagaceae
  • 属:クサスギカズラ属 Asparagus
  • 原産地:南ヨーロッパ

佐賀県では「ウエルカム」という品種のアスパラガスが栽培されています。県内で栽培が開始されたのは、昭和29年のこと。初め県東部で試験的に導入され、現在では県内の至るところで栽培されています。主にビニールハウス内で育てられ、春と夏の2回収穫が可能。長くて10月頃まで出荷が見込めるため、長期的な収入を得ることができる作物です。また、疲労回復、貧血予防などに効果がある栄養素が豊富に含まれている野菜でもあります。

EDITING POSTSCRIPT編集後記

佐賀百家図鑑第2号はアスパラガス農家の安東浩太郎さんを取材させていただきました。

前職時代を大阪で過ごし、Iターンで佐賀で新規就農、移住と新規就農両方の側面から成功されている、正にロールモデルと言える方ではないでしょうか。アスパラガスを軸とした様々な取り組みだけを見ると、非常に感覚の研ぎ澄まされた人間性に感じがちですが、取材をしてみると実は広くアンテナを張り、計画的に実行するリアリストの一面を垣間見ることができました。

初期投資等の資金面で、新規就農はハードルが高いイメージに捉われがちですが、どこで何をどのようにするかで、就農のハードルを大きく下げることができることを、安東さんは証明しています。取り巻く環境や家族を見ていると、関わる全ての人が「今」を楽しく、人生を歩んでいることに気づかされます。アスファルトの上で多様な電子機器に囲まれて生活するのではなく、あくまで自然界の一部として生活する「農業」の豊かさを強く感じました。

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