佐賀百家図鑑 SAGA VISUAL DICTIONARY

PROFESSIONAL佐賀の農業者

牛と共に、地域と共に。もっと身近な牧場を未来まで。

中島大貴 / Hirotaka Nakashima 32歳

佐賀県嬉野市、酪農業を営む家の3代目として生まれる。大学では建築やまちづくりについて学ぶが、酪農が持つ地域における可能性を認識し、就農することを決意。365日、牛たちと向き合い、新鮮な生乳を出荷している。そんな生乳を使用して、6年前からはチーズづくりに着手。始めは、手探りでスタートしたが、6次産業の成功例として、佐賀県内外で注目を集める。
これまでは廃棄されていた「ホエー」を使用してつくる「ブラウンチーズ」は、2018年チーズのコンテストで金賞を受賞。珍しさだけでなく、その品質も高い評価を受けている。

地域に必要とされる酪農を目指して。

建築の道を志し街づくりを勉強していく中で、農業というフィールドで建築や街づくりの知見を生かせることに気付いた中島さん。酪農を中心に、米・麦・大豆の栽培、乳製品の製造とその仕事は多岐に渡ります。県内でも減少著しい酪農は、実は地域にとって重要な役割を果たし得ると語る中島さん。目指したのは、酪農を軸に、地域での「循環」を創り出すことでした。

生き物と向き合うということ。

農作物と違い牛は、365日世話が必要な変化に敏感な動物。牛にとって安定した環境を如何に保つかに日々神経を払わなければいならない一方で、牛の日々の食事や排泄には、地域の循環に大きな役割があります。通常輸入物が多い飼料ですが、ナカシマファームでは輸入物を最小限に、地域で栽培した専用の飼料稲を使用しています。排泄物は微生物で分解することで、牛の病気を予防する効果もある寝床”バイオベッド”として活用したり、堆肥として飼料稲や他の作物の栽培に再利用されます。一言に酪農と言っても、微生物の力を最大限に利用した循環の仕組みが中島さんの酪農だったのです。

6次産業への挑戦と評価される喜び。

地域の人達に、「牧場があってよかった」と感じてほしいという思いから始めたチーズづくり。その製造過程で発生する「ホエー」という副産物の活用は、ナカシマファームにとって大きな課題でした。その活用方を模索する中で辿り着いたのが、ノルウェーにあるブラウンチーズ。日本ではほとんど製造されておらず情報が限られる中で、独自の研究と製造を試行錯誤していきました。改良を重ねたブラウンチーズは、遂に国内コンテストで金賞を受賞。今ではその味、品質が多方面で評価されています。

この土地から、世界を驚かせたい。

全国の酪農家が減少する中、持続可能な仕事のやり方が未来の酪農業には欠かせないと中島さんは語ります。近い将来、チーズの包装紙などの資材も分解できる素材に変えて、また堆肥として活用することで更に大きな循環がつくれると目を輝かせて話す中島さん。目の前の命と向き合いながら、地域と連動した持続可能なシステムは、更に高いステージへと向かっています。 「いつか世界を驚かせたい」と語る中島さんの目には、自然を思いやる優しさと情熱が溢れていました。

AGRICULTURAL PRODUCTS佐賀の農産物

No.09
  • 【学名 : ウシ Bos taurus】
  • 目 : 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
  • 科 : ウシ科 Bovidae
  • 属 : ウシ属 Bos
  • 原産 : オランダ(ホルスタイン種)

EDITING POSTSCRIPT編集後記

佐賀百家図鑑 第九回目は、嬉野の酪農家 中島大貴さんを取材させていただきました。佐賀県というとあまり酪農というイメージが薄いかもしれません。近年、「サステナビリティ」という言葉をよく耳にするようになり、循環をキーワードにどのように持続可能な社会をデザインしていくかが大きな課題となり、世界中で様々な取り組みがあります。中島ファームさんでは牛の命を軸に、フードロス解決の6次化や微生物を用いた循環、地域農業との連携など、正にサステナビリティを集約したような様々な先進的な取り組みをされていました。目の前の自分でできる範囲から、世界を視野に入れたチャレンジは、きっと更に大きな飛躍に繋がっていくことでしょう。 意義のある仕事は、目の前にあるものから始めることができることを中島さんに学びました。

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